戸川昌子「大いなる幻影」再読
推理小説といえるのかどうか、という点はあるけど、江戸川乱歩賞受賞作。
トリックというよりは、プロットと独特のムードで読ませる作品という感じですが、どんでん返し的なものもあります。
僕は、読んでいるとき、それぞれのシーンが、白黒で思い浮かびました。
歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」
僕はこういうのトリックではなく、プロットで読ませる本だと思っていますが、トリックがなかなか枯渇した現在では一つの方向性として、いい、楽しい、と思っています。
こういうプロットで読ませるものって、たとえば、クリスティの「アクロイド殺し」とか、クイーンの「ドルリー・レーン最後の事件」なんかもそうだという認識です。
まあ、読むだけの側ですので、気楽な物言いで、苦しみぬく作家の人には軽く言うなよ、って思われちゃうかもしれませんが。
この作品も、プロットの面白さに違和感が生じないようにいろいろ工夫している、そっちの伏線が読んでいて楽しい、読み返してニヤリ、という感じでしょうか。
終盤のどんでん返しに向けて作者が準備していくところなんか、再読してこその面白さ、かもしれません。
横山秀夫「半落ち」
世間からはだいぶ遅れて初読です。
読み終わってから、ネットで検索してみると、いろいろ論争があった作品なんですね。
僕は、終わり方は少しきれいすぎるかなー、謎の部分の動機的なものが弱いかなー、とは思ったけど、全体におもしろく読めました。
引き込まれた。
ところで、僕は、広報担当をそれなりに長くやって、新聞や雑誌の記者とはまあまあつきあったから、新聞記者がメインになる章では、どうも新聞記者の考え方や行動がすごく気になって、本筋から視点が離れてしまうところがありました。。。
東川篤哉「もう誘拐なんてしない」
これ、テレビ番組になったんですよね?
軽快でユーモラス、トリックはちょっと軽い感じはするけどけっこうしっかりしたものだし、伏線はかなり準備されているように思います。
終わり方もすぱっとしていますよね。
動機について、あ!そうなの?と思わせるが、くどくど説明しないところが心地よかったです。
この作者のほかも読んでみたいと思いましたよ。
僕はテレビ見ないので、よく知らないんだけど、「謎解きはディナーのあとで」もテレビ番組になっててこの作者なんですよね?
ディクスン・カー「夜歩く」再読
この高名な作品に僕が意見を述べるには、読者として力不足の感はあるけれど、率直に言って、読者もそして作者もすれていない時代の産物なのだろうなぁ、という感想を持ちます。
全体としては、謎が明かされていく過程や場面設定など、物語としての惹きこむ魅力はあると感じます。
不可能さを引き立たせるプロット設定や伏線の張り方もいい感じだと思います。
でも、さすがにメインのトリックには無理があるし、探偵にもこれといった魅力に欠けると思ってしまうのも事実です。
(現にこの探偵はこの後お払い箱になってしまうわけですし。)
探偵小説って、トリックと探偵以外の部分によるところも大きいんだよなぁ、と思ったりもする再読なのでした。
土屋隆夫「華やかな喪服」
土屋隆夫は大好きなのだけど、この作品の時点でたぶん79歳。
流石にトリックを創出するというパワーは薄れてしまっているのかもしれない、とは感じました。
けど、このプロットの面白みと緊迫感には引き込まれるものがありますよね。
広げた話を収めきれていないのでは?ということと、僕の好きな本格ものとは呼べないということはあるかもしれないけど、楽しめました。
松本清張「聞かなかった場所」再読
これにはトリックもなく、探偵もいない。僕の好きな探偵小説ではないけど、引き込まれて読んでしまいます。
前半と後半で全く違った緊張感があるけど、どちらにも魅かれます。
僕は、巻末の広告面(たいてい書名が列挙されている)まで自炊するのだけれど、そこに下手な字で、「S50年6/15購入」と買った日と自分の名前が記されていました。
このころが一番松本清張を好きだったかもしれません。
小峰元「アルキメデスは手を汚さない」再読
青春なんとか、というキャッチフレーズがつくと、なんとなく甘酸っぱいイメージがあるけど、すごくソリッドで乾いた感じがする小説なのは今も変わりません。
ただ、主たる登場人物に高校生が多い分、なんか、自分がどの立ち位置から物語を見ているか、っていうのが若かった初読の時とある程度年を重ねた現在と変わったなあ、と思わされました。
トリックやプロットは目を引くものはないけど、一気に読ませる感じですね。
都筑道夫「最長不倒距離」再読
面白い。
トリックというよりプロットで読ませる作品だと思います。
都筑道夫は大好き。とにかく好きです。
「やぶにらみの時計」がまた読みたいなー。
実家のダンボールの奥底にあると思うんだけど。
今手に入りにくいんですよね、この作者の作品の一部は。
こんなに、こんなに、面白いのに。
土屋隆夫「針の誘い」
ちょっとだけ気になるところはあるけれど、鮮やかで素晴らしいトリックだったと思います。
さりげなく小さな行動に意味がある、という定番ではあるものの、緻密な伏線の張り方が、好きですね。
土屋隆夫「赤の組曲」
探偵小説としては、メインのトリックに気付くか気付かないか、それをどう思うかで受けとめ方、感想は変わってきそうです。
この作家は大好きな作家のひとり。
トリックはそんなに斬新ではないと思し、舞台設定もごくありふれた日常的なのが、いいと思う場合も、少し物足りないと感じる場合もあるけど、文章のテンポが好きです。
でも、昨年11月に亡くなってしまいました。
そんなに大きなニュースとしては扱われなかったけれど、探偵小説好きで、感慨にひたった人は多かったと思います。
寡作で、活動年月の長さのわりには少ないその作品をまたゆっくり読んでいきたいと思っています。
横溝正史「火の十字架」再読
シャーロック・ホームズものは第一級のミステリーだと思うけど、終わり方に、あら、と思うことがありますよね。
この本も、そんな読後の感想です。
再読だけど、もう完全に忘れてました。
「S(昭和)50年こう入」と、子供の頃の自分の字で巻末にメモが書いてありました。
その頃の僕が読むには少しエロチックな内容の気がしますが。。。
横溝正史「魔女の暦」再読
この時期のトリックは、やっぱりちょっとシンプルかな。
横溝正史「夜の黒豹」再読
僕は「岡山もの」が好きなので、こういった、いわゆる通俗的なものには多少の抵抗感があります。
のだけれど、シンプルながらちゃんとしたトリックがあって、終わり方もコロンボみたいな感じで、わりと面白く読める、と思います。
登場人物を覚え切るのが大変だけれどもね。。。